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[ 文庫 ]
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坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1999-01
参考価格: 670 円(税込)
販売価格: 670 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 79円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
情熱だけがあった明治日本 第一巻 本作が司馬遼太郎の中でも最高傑作だということは知っていたが、読む予定はなかった。理由はもう読み尽くしてしまったのではないかと思っていたからだ。
しかし、今年(2009年)11月からNHKでドラマが始まるので読んでみようと思った。
とりあえず第一巻を読み終えただけだが、前言は撤回したい。
幕末の作品を読んだだけで明治日本を知った気になっていた自分が情けなく思う。
資源もなく、欧米各国からは蔑まれていた当時の日本は、「必ず日本を先進国にするぞ!!」という情熱だけで動いていたことが一巻を読んだだけでもわかる。
そして、その通り日本を先進国にしたことは凄いことだ。
今の日本人に必要なことは明治に生きた日本人を見習って、「情熱」を持って生きることなのだと思う。
第二巻では日清戦争が勃発するようだ。
二巻以降も目が離せない。 これが傑作? 司馬遼太郎の作品は始めて読んだのですが・・・・・
この程度で傑作と言えてしまうのか?と言うのが正直な感想。
まだ四巻までしか読んでないけど、秋山兄弟と正岡子規を中心に話が進むのかと思いきや途中から視点は一定にならない、途中から一寸だけ出てくるキャラクターの説明が長くご丁寧に生まれたところから死ぬところまで書く。
それが頻繁に繰り返される物だから、いったい物語の上で今が明治何年だか分からなくなってくる事がしばしば。
ぶつ切り新聞連載小説だからそれで良かったのかもしれないが、これだけの長編として纏めたとき極端に構成が悪いのは否めない。
特に正岡子規が死んでから以降は酷い物で、主人公がほとんど登場しない。
これで小説なのか?こんな物が小説と言えるのか?
史実に関してはとても良く調べているのが分かる、それはとても評価したいので☆は二つ
一般的な主人公達を軸に展開するストーリーを期待するとかなり幻滅します。
詳しい歴史の教科書ぐらいのつもりで読まないと挫折すること請け合います。
古本の市場を見るとよく分かる。1?3巻位までは古本屋に良く並んでいるが、中盤以降は捜すのが大変です。
手放す人がいないと言うよりは、新品で買う人が少ないのだろう 日本人の心はどこに 何をいまさらのレビューです。
侍が刀を捨て、学問により立身出世を志す時代。
国家による富国強兵政策、帝国主義、アジアの一等国を目指す時代、
主人公、秋山兄弟、正岡子規の物語の始まりである。
本書にある、明治時代の古風な考えは、
いきなだけでなく、義、仁、忠など武士道につながる精神をも感じさせる。
物語は、これからの展開を予測させる、
清の巨大軍艦”定遠、鎮遠”に対し、日本海軍の新造高速艦”吉野”の対比
で終わります。
大きく動き出す時代の中、今後の主人公たちのドラマが期待されます。
本書を読み、
彼らの生きた時代と、我々の生きている現代を結びつけるものは何か?
日本人として守るべき、誇りや精神は何か?
のような、日本人のアイデンティティを探す、取り戻すためにも、
良書ではと思えます。 歴史を自分の血肉にするための教科書 羅列された事実を記憶しただけでは歴史を学んだことにはならないだろう。その事実を組み込んだ物語を作る作業が必要である。できあがった物語には個人個人のフィルタがかかっているので、100人いれば100通りの物語ができる。ただし、その中には優れたものも劣ったものもある。
本作品は歴史的事実を組み込んだ物語の中の、最も優れたものであると言って間違いない。そのため、当時が現在と断裂したものでなく、今の自分にもつながっていると認識できる。そう言う意味から、歴史を自分の血肉とすることが学べる最高の教科書と言ってもいい。
例えば、佐藤 晃著『帝国海軍が日本を破滅させた』で、本著者とは違った観点からの日露戦争観を知ることができるが、基本を本書に置き、さらに他の著作物などを通して自分なりの歴史を醸成するのがいいのではないかと思う。
そのような御託を並べる前に、理屈抜きにおもしろい。エンタテインメントのみを求めている人にも自信を持ってお奨めできる。
(これは1?8巻を通してのレビューです。) 明治という時代が本当によくわかる作品 もうすぐNHKでもドラマ化しますし、相当認知度の高い作品で、あまり紹介する必要がない気もするのですが・・・しかし!あまりに好きな作品なので少し書かせてください。
当然星5つ。司馬遼太郎の作品で一番有名なのは「竜馬がゆく」かもしれませんが、個人的にはこちらの方が好きです。
明治維新後15年しかたたない弱小国家である日本が世界の一流国の仲間入りをするために(というか不平等条約を改正してもらうために)、涙ぐましい努力で陸海軍を増強し、結果として日清戦争で清を破り、さらにそのたった10年後にはロシア帝国というとんでもない超大国を相手に戦争を起こし、それをも結果的にではありますが戦勝国としてポーツマス講和条約に望むのです。当時としてはまさに奇跡としか言いようのない大番狂わせだったわけです。
明治に生きた3人の主人公を軸にその日清・日露戦争をジャーナリストのような視点で克明に描いているのがこの作品です。3人の主人公とは・・・陸軍初の騎兵隊を率い、当時最強といわれたコサック騎兵を破った『秋山好古』、日露戦争の勝利を決定的なものにした日本海会戦で、その作戦の全てを担った男、『秋山真之』、真之の幼馴染であり、明治期の俳句に革命をおこした『正岡子規』です。ちなみに真之は好古の弟です。
日本人ならば、読めば必ず日本人としてのアイデンティティーをそこに感じることでしょう。とかく第二次世界大戦の敗戦が直近の戦争として、よく取り上げられます。しかしたった100年前の同じ日本で、このような誇り高き戦争(もちろん戦争はよくありませんが)がおこなわれたということは皆が必ず知って欲しいことだと思いました。
日本人なら、とにかく読んでくれ!!!
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[ 文庫 ]
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竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1998-09
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 272円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
竜馬の器の大きさにぐいぐいと引き込まれる稀有な感覚を体験することができる 20歳の時に読んでいたら人生が根本から変わっていったかもしれない。今の人生を後悔しているわけでもないが、人の生き方に決定的な影響力を与える因子が首尾よく散りばめられた痛快な小説である。日本が戦後60有余年の閉塞感に喘ぐ中、かの明治維新の立志伝中の人物である坂本竜馬の生き様がかようなものであったと、多くの脚色があるにせよ、こうだとばかりに示してくれた司馬遼太郎の偉業を称える。
日本の歴史の中に、我々のDNAの中に、大いに諸外国に誇れる素晴らしい生き様が、潔さが事実としてあったというだけで高らかな気持ちになる。腹の底から元気が沸いてきて、すがすがしい気持ちになれる小説である。大衆向け歴史小説と馬鹿にする御仁もいるだろうが、気にする必要もない。読むかどうかを決めるのは自分だし、読んでよい気持ちになるのも自分である。
印象に残った箇所は、以下の通り、
→坂本家は、城下では随一の金持郷士であった
→男児志をたてて郷関を出づ
学もし成らずんば死すともかへらず
→衆人がみな善をするなら、おのれひとりだけは悪をしろ。逆も、またしかり。英雄とは、自分だけの道をあるくやつのことだ。
→男の中でも一番手に負えないのはこういう男だと思った。小心な男だけに、切羽詰ると何を仕出かすかわからない。
→昔は、世間で大仕事をするほどの人は、手下に泥棒の一人は必ず飼っていたもんだ。諸国の様子が人よりも早くわかるし、世間の裏も見えてくる。
→若者というのはいつの世でも、竜馬のようなカラリと乾いた若者を仲間の中心に迎えたがるものである。理屈よりも、気分なのだ。
→書物などは学者に読ませておいて時々話させ、よいと思えばそれを大勇猛心をもって実行するのが英雄だ おもしろい 20年以上も前の作品なのに、まったく違和感なく一気に読めました。
司馬先生の本は、豊富な取材力が邪魔して本筋から逸れることがありますが、
(それもまた一つの魅力ですが)
この巻に限っていえば、まったくそんな感じを受けませんでした。
はじめて司馬作品にふれる人に特におすすめしたいです。
あこがれ 「将来はどんな人になりたいですか?」「尊敬する人は?」そんな質問への答えにどれだけ今まで悩まされたことか。多くの人がその答えとして挙げるこの人はいったいどんな人物なのか?知らないまま大人になった自分にとって、その活躍は自分の想像をはるかに越えるものでした。「草雲雀は小柄ながらも、夜を明けさせるのでございますよ、坊ちゃん」 長い長いこの長編を夢中で読み進めると、この乳母のおやべさんの言葉がとっても心にしみわたり、あこがれの人は坂本竜馬です、と自分にもやっと答えができたのでした。 竜馬の使命 坂本竜馬の生涯と混迷の幕末を描いた小説。
桂小五郎、高杉晋作、西郷隆盛、大久保利通、後藤象二郎、勝海舟、陸奥宗光など
綺羅星のごとく光る英雄たちも描かれているが、やはりその中でも竜馬はその独自性
という点で特別に輝く存在である。
小説を読みすすめるごとに、どんどんと竜馬の人柄に引き込まれてしまう。
竜馬の生き方は、自らの理想を追い求め、その実現に向けて手段を問わず駆け抜けていく。
その姿は男たるものの志の重さを感じさせるものである。
しかし、その一方で、理想への想いだけでない極めて現実的かつ冷静な視点を持っている
のも面白い。
自らが必要とされる局面をしっかりと見極め、想いだけでなく必ず利をもって説得に
向かう姿は他の英雄には見られない独自性である。
歴史にifはないが、もし明治になってからも竜馬が生きていたら世の中はどうなっていた
だろうか?新しい形態の会社が出来上がっていただろうか?
そんなことを考えずにはいられない。
しかし、不思議なもので、はじめからプログラムされているかのように幕末の英雄たちは
時代から去っていく。
高杉晋作、中岡慎太郎、西郷隆盛、そして坂本竜馬とまるで小説かと思うように自らの
役割を果たしきって死んでいく姿は自らの使命に命を賭けた幕末という時代ならではの
ように感じた。 読ませる。楽しい。深い いまさらながらに評することもないが、とにかく面白い。
まだ読んでいない人は、ぜひ読まれたい。
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[ 文庫 ]
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燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)
・司馬 遼太郎
【新潮社】
発売日: 1972-05
参考価格: 780 円(税込)
販売価格: 780 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 149円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
滅び行くものの美を感じます 新撰組副長・土方歳三の物語。
類い希な才気を持ちながらも、
日本建国という潮流にあらがって、
儚く滅びゆく姿が、
源義経や武田勝頼を彷彿とさせます。
グイグイと引き込まれ、
一気に読破してしまいました。
人生は、勝ち負けではなくかっこよさ 人生は勝ち負けではない。
決めたことを貫く、男の人生が描かれている。
明治維新で活躍した人物の中で、一番かっこいいのは土方歳三であろう。
かっこよさは、歴史に与えた影響や、政治的な意味合いの大きさでは測れない。
自分の意志を貫くことが、たとえ歴史上間違いで、結果が惨敗でも、
かっこいいことであることを、証明してくれている。 読ませる文章であり、かつ読みやすい文章。 私は、たくさんの司馬遼太郎氏の作品を読んできたが、彼には、「?といっていい。」という文末が多すぎるように感じていた。(たとえば、「その行動は、たとえ殺人であっても、義挙といっていい」といったぐらいに。)こう書かれると、それは、正しいように思えてしまう。
小説だから、歴史の事実とは違う点があってももちろんいいのだが、それでも、先入観にとらわれてしまう。
だから、長い間、司馬氏の作品は敬遠していたのだが、図書館で偶然手に取り、また読んでしまった。
本作品は、やはり、読んで面白い。しかも抜群に。
本作品では、それほど、「余談だが?」というセリフも多くないように思う。
読みやすく、かつ、読ませる魅力にみちた素晴らしい文章だ。 なぜか読み返したくなる本 なぜか読み返したくなる本でした。
もっとも上下2巻という読みやすさがあるのかも知れませんが…
短い話の為か、話にのめり込むきっかけが勿ぶらずに作ってある感じがします。 あこがれの人 読書嫌いの私が、読書を始めて間もない頃、何となく知っていた司馬遼太郎という名前、燃えよ剣という題名に惹かれ、手に取ったのが、20数年前。以来何百冊という本を読み継いできたが、この本以上に感銘を、影響を受けた本は無い。大局的に見たら、歴史にささやかな抵抗を試みたに過ぎない土方だが、世がどう流れようと、周りが寝返ろうともひたすらに己の筋を通す。筋金入りの生き方をしている人間が少ないなかで、時代が変わっても輝いている。
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[ 文庫 ]
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峠 (上巻) (新潮文庫)
・司馬 遼太郎
【新潮社】
発売日: 2003-10
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 355円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
立場が違っていたら 立場が違って西国の外様藩にいたとしたら、維新以降の日本の近代化に多大な貢献をしたであろう逸材だと思います。はっとするような主人公のせりふに出会い、何箇所も線を引いてしまいました。花神も面白かったですが、花神の反対側から覗き込んでいるような不思議な感覚がありました。実はあまり期待していなかったのですが、おすすめできます。 幕末に死んで行ったのが本当にもったいない 思想的な背景が語られることが多くて、考えさせられる作品です。
明治時代を創った人々というのは、現代の我々が受けたような国民教育というのは受けていないんですね。孔子や孟子の思想を勉強としていたことが、河合継之助の言葉から読み取れます。でも、その思想を地で行った人というのは、存外少なくてそんな人たちが名を残したんだということに気が付きます。
そういう意味においても、陽明学の知行合一というのはすさまじい思想ですね。
河合さんが明治草創に参画せず、死んでしまったのは誠におしいです。 「文字が立ってくるまで読む」(本文から) 「なまの人間を崇敬できぬ」
「人間として人間にあこがれるという他愛さがない」
「人間は、互いに肥料であるにすぎぬ。
…人物に惚れることを怖れた。」
「万事、この男は不逞であり、可愛気がない。」
(何れも本文から)
でも、だからこそこの主人公河井継之助に惚れますよ。
考える凄さ、己の意見、優れた主観で動く素晴らしさを感じます。
10代の人に読んで欲しい本!! 司馬遼太郎作品はいろいろ読んでいるが、『峠』が一番考えさせられる
内容の著書だった。 他の方のレビューにもあったが、読んでいて途中から
『継乃助が戦死せずに明治も活躍していたらどうだったんだろ?』 とか
『なんで、先見性がある継乃助が最終的に戦に挑んだか?』 とずっと考えながら読んだ。
それは、継乃助が一番重んじた学問が陽明学で、自分自身が越後長岡7万4千石
牧野家家臣 河井家 そして、武士に生まれた事の意味と照らし合わせたからだと思う。
今の、世の中にもこういう矜持を持った人がたくさんいればいいなぁと思う。
10代の若い人たちに大いなる見本になる人物として参考にして頂きたい。
以前、『燃えよ剣』も読んで感銘を受けましたが、司馬氏の作品には毎回
やられっぱなしです。これから 『世に棲む日々』を読もうと思います。 生き方を考えさせられる本 司馬遼太郎作品の中では、メジャーな方では無いと思いますが、
かなり好きな一冊になりました。
主人公の河井継之助の他人に流されず、自分の信念を貫く姿勢や、
命は使うべきところで使わなければ意味が無いという覚悟に、影響を受けました。
また、河井継之助の考え方の基本は陽明学という学問らしいですが、
そちらの方にも少し興味を感じました。
最終的に長岡藩にとってこのような大人物を抱えたことが、
良かったのか悪かったのかは難しいところではありますが、
歴史物が好きでない方にもお勧めの一冊です。
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[ 文庫 ]
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新装版 軍師二人 (講談社文庫)
・司馬 遼太郎
【講談社】
発売日: 2006-03-15
参考価格: 770 円(税込)
販売価格: 770 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 350円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
どれも面白い 戦国時代を中心にした歴史短編集です。
関ヶ原前後から大阪夏の陣まで
短編で周囲の人物を描くことによって
全体の時代の雰囲気が浮かび上がるように
感じました。
今回のテーマは、戦に強い男は
女にも強いということなのでしょうか。
どの作品も面白いですが、
特に渡辺勘兵衛を取り上げた話がよかったです。 うっかり一冊が軍師二人なのかと早とちりしたが 幸村や後藤又兵衛関連の話を読みたくて、うっかり「軍師二人」という話だけの作品と思って買って、短編の一つだと分かってちょっと早とちりしたのですが、
読んでみると他の話もおもしろく、雑賀衆の話や関ヶ原の時のある男女の話など、戦国のたくましい女性をめぐる短編が意外と楽しめる作品で満足でした。 面白いっていうのは 最低の誉め言葉なので使いたくないんですが。
長編をいくつも書いて調べ物をしていくと、盛り込めなかったエピソードとか後でわかったこととか出てきてしまうんでしょうね。それを短編にしました、みたいな短編集です。それぞれ何を書いている時のだろうと考えながら読むのがよろしい。
司馬さんはやっぱり家康は嫌いだったんでしょうか。 司馬文学を凝縮した短編集 戦国期の様々な局面・武将に焦点をあて、濃密な考証に基づく時代背景を
情景豊かに記された、珠玉の短編集だと思います。
登場人物一人ひとりが大変魅力的で、生き生きと描かれており、司馬文学の
魅力の一端を感じられました。
筆者の心へ、特に強い印象を残したものは「侍大将の胸毛」でした。
筆者は個人的に、この短編集の主人公は、すべて「女性」であると感じて
おりまして、特に、この章の内儀の「心の揺れ」の震えは、いまだに鮮やかに
筆者の心に残っております。
オオトリの「軍師二人」も、優秀な部下にも、有能な上司がいないと・・・と
現代社会にも投影される戒めを感じつつ、その一方で、大きな影を落として
いたのが、あの「女性」であったか・・・と、感じました。 司馬遼太郎の超大作だけでなく短編集も面白い 戦国時代を生きた武将にまつわる短編を8つ収録。表題作の「軍師二人」は、大阪夏の陣で活躍した二人の軍師、後藤又兵衛と真田幸村の葛藤とそれぞれの心理を浮き彫りにしている。またこの二人をうまく御することができずに、大阪方崩壊への決定的方針を作った大野治長やその取り巻きも詳しく描かれている。歴史の転換点を作った器量の差、施策の差をまざまざと見せられる。「雑賀の舟鉄砲」では、本願寺・別所・毛利の連合軍と、秀吉(信長)の攻防に居合わせた雑賀の鉄砲傭兵が主人公。当時の鉄砲傭兵がどのように雇われ、生計を立て、活躍していたのかが垣間見られて面白い。他にも、関ヶ原の戦直前に、家康の側室を大阪城から無事に連れ出す(地味な)役目を与えられた佐野綱正の苦悩と忍耐、最期を描いた短編も興味深く読んだ。
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[ 文庫 ]
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翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 2002-02
参考価格: 610 円(税込)
販売価格: 610 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
司馬による評論小説ともいえる作品 ときは明治6年。維新と戊辰戦争を経て、日本は欧米列強の脅威にさらされつつ、新たな国家建設を模索する多難の時期にありました。主役は薩摩出身の両雄、大久保利通と西郷隆盛。かつて倒幕に向けて盟友であった二人が、「くにのありかた」を巡って袂を分かち、別々の道を歩み始めるところから物語は始まります。
第1巻では、明治の元勲となった大久保、西郷、そして、長州閥の木戸を中心に、それぞれの性格や国家観を丁寧に描写することで、西南戦争に至るまでのこの長い長い物語の土台をしっかりと作ろうとしているように感じます。特に、人民が未熟な時期においては国権主義国家をつくることを優先した大久保と、維新後の新国家像の明確なビジョンをもたず自らの死地を求めるように征韓論に走った西郷の、二人の人物像と考え方の対比が際立ちます。
司馬作品のなかでは、ひときわセリフが少なく、司馬なりの人物評や歴史観も豊富に含まれている点で特徴的で、これを単純に歴史小説とよべるのかどうか。明治初期という日本の歴史のなかでも大きな転換点、かつ、現代日本にもつながる要素(例えば官僚主導的な国家など)も含まれる時期をいわば評論的に書いた小説といえるのではないでしょうか。娯楽的に楽しむというよりも、日本という国のあり方を問うような大作になっています。 西郷の魅力 実際、第1巻では語ることの少ない西郷隆盛。
ただ、読み進めるとその茫洋とした魅力が尽きません。
語らないことによって、いろいろ想像してしまうからでしょうか。
西郷隆盛に強く惹かれつつ異なる選択をする桐野利秋、川路利良の心情にも
興味がつきません。 征韓論までの外堀埋め 第一巻 裏面の説明などを見ると、「すぐに征韓論を巡る大久保と西郷の議論が始まるのかな」と思っていましたが、まだまだ始まりません。まだ「征韓論」までの経緯や因果関係などの段階です。いわば「征韓論までの外堀埋め」といったところでしょう。
第一巻を読んで思うことは、「日本の歴史教育について」です。
現在の日本教育に欠如しているのは歴史教育です。特に幕末史をもっと重視しなければいけない、そう第一巻を読んで本気で思いました。
「竜馬がゆく」や「花神」を読んで幕末に興味を持った人にはお勧めです。まだ第一巻を読んだだけですが、本書は傑作です。
余談ですが、「歳月」は本書を読んでから読むべきだと後悔しています。 どうすれば失敗するのか? 西南戦争とは、戦略なき行動がいかに愚かで、更に多くの人間の
命を無駄に奪ったか、という意味ではいい見本です。
西郷が野に下る前の前半と、西南戦争の後半では中身はかなり違い、
西南戦争に入ってからは、こんな桐野等のような馬鹿がいたために、
万単位の人が犠牲になった嘆かわしい内容で読むのが辛くなりますが、
前半の東京での駆け引きは明治政権成立後ってこうだったのか・・
と、非常に興味深く読めます。
ただし、この前半部分はしつこいくらいに長い・・
全10巻ですが、3?4巻くらいにして欲しかったですね。
現代でも、見通しが甘い新規事業や、過去の成功体験で物事を
考えてしまうというのは良くある事。
そして、それら無能なリーダーや幹部はどう行動するのか。。。
どうすれば失敗するか、という事はこの本を読めば十分学べます。 作者の想いの変化・・ 明治という時代が走り始めようとしている時期を西郷さん等を中心に、その時代に生きた人々を描いた息吹を感じさせる作品である。西郷さんや桐野を書いているかと思えば、それを取り囲む情勢の細部に突っ込んだり、他の人物に関して細部にわたって書いていたりで、確かに読むのには根気が必要である。ただ一つ、この作品全巻を読んで感じたのは、最初のころの司馬遼太郎氏の西郷さんや桐野に対する想いと、後半の方の同氏の西郷さん等に対する想いは大分変化があるように思える。その表現の微妙な変化も本作品を読む面白さの一つかもしれない。
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[ 文庫 ]
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関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)
・司馬 遼太郎
【新潮社】
発売日: 1974-06
参考価格: 740 円(税込)
販売価格: 740 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
勝者と敗者の差とは 石田三成のおおいなる失敗の物語。
主役は石田三成の体を取りつつ徳川家康――
というよりも、豊臣政権が崩壊する時代の流れと言ったほうがいいのかも。
自分が育て上げられ支えてきた豊臣政権の延命を図る三成。
しかしその行動は結局の所新たな徳川政権を誕生させるための
礎を築くことになってしまった、というのがなんとも皮肉です。
王佐の才を持つ人間が主として立ち上がった時の悲劇。。
しかし数々の「ちょっと的外れな三成の知恵」のエピソードも、
まかり間違って西軍が勝っていたら全ては肯定的なエピソードになるんだろうな。
ひょっとすると歴史の数多くのエピソードや英雄の思考はこんなもんなのかな、
なんて考えたりするのもまた面白いです。 歴史のif これを読めばいやでも「歴史のif」を考えてしまいます。「もしこのときこうだったら西軍が勝っていたかも」という場面がたくさんあり、悲運の武将石田三成にに心を寄せる人は歯がゆい思いをしながら読むでしょう。私はといえば、三成は非常に魅力的ではありますが、たとえ関ヶ原で西軍が勝ったとしても歴史が彼を新しい時代の創設者に選ぶことはなかっただろうと感じました。一方家康は鼻もちならない人物ではありますが、新時代を切り開くにふさわしい人並み外れた英雄です。理想を掲げる者、権謀術数を操る者、利益で動く者、時代に流される者がさまざまに入り乱れながら、大きなうねりとなって関ヶ原の戦いに収束していく様は、きわめてスケールの大きな歴史ドラマです。純粋な娯楽作品として読んでも大いに楽しめます。 嫌われ者 光成 歴史物が苦手な自分がこの本を読んだのは三国志を読み 次に項羽と劉邦を読み 日本物も読んでみようとたまたま
アマゾンで推薦された関ヶ原を読みました。項羽と劉邦のレビューにも書きましたが司馬遼太郎の 小説でも単なる解説書でも無い独特の文章に魅せられどんどん読み進みました。今まで石田三成は嫌なイメージだけしかありませんでした。
しかし,光成なるほど今の世の中にいればおそらくヒーローになれるのではと思います。さあ 中巻を読むぞ。 家康と三成の駆け引きを描く第1巻 全3巻の第1巻では、秀吉亡き後の戦国の世で、石田光成と徳川家康がさまざまな因縁と駆け引きのなかで天下分け目の関ヶ原に突入していく背景を中心に描きます。
秀吉への恩顧と義憤から家康を討とうとする三成。一方で、豊臣家の御為と言いながら明らかに天下を狙う家康。会津の上杉氏と呼応して日本全土を舞台に家康を挟み撃ちにする大戦略をたてる三成と、その戦略を上回りあえて三成の挙兵を誘い叩こうとする家康の虚虚実実の駆け引きが見所です。それにつけても、家康とその謀臣本多正信の巧妙な謀略に三成は次々とはめられていくさまは、物語とはいえ、家康が「狸」になぞらえられるのがよく分かります。
ところで、本作は司馬作品のなかでも佳作というか中くらいのボリュームなので、表現は比較的簡潔で、各武将の人となりなどの描写も少し軽めですが、逆にそのことによって、娯楽作品として気軽に楽しめる内容になっていると思います。
これ一冊で戦国武将に詳しく とまではいきませんが、 この小説の時代背景は、正に戦国動乱期とも言え、 出てくる武将の数も多いです そしてさすがは司馬作品と思わせる、文章 詳細で、語尾まで極めて丁寧な装飾ながら、それでいて簡潔な文章です テンポもとても良いです 途中出てくる余談は賛否あるようですが、単純に歴史の裏的な史実にも詳しくなれると思うので、自分は好きです また、司馬作品はとても話の節目がよく、目次ごとの区切りがよいです『そろそろ集中が切れるな』と思うところで、次の節がくるので、ゆっくり読むときも、非常に読みやすくて良いです しばらく読んでなくて、途中から読んでも節のはじめから、話の流れがよくわかりますいざ合戦の時もとても歯切れよく、壮大な合戦の構図がありありと臨場感と興奮を伴って 脳内を刺激するかのように 駆け巡ります 人間、三成の不完全さ 徳川家康の不気味さ 慎重さが、対比的にもよく表れています そして なんといっても小説オリジナルの人物、初芽がとても自然な感じで 三成との運命を供にするかのように物語の中核を成しながらも静かに寄り添っています
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[ 単行本 ]
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二十一世紀に生きる君たちへ (併載:洪庵のたいまつ)
・司馬 遼太郎 (しば りょうたろう)
【世界文化社】
発売日: 2001-02-12
参考価格: 1,260 円(税込)
販売価格: 1,260 円(税込)
Amazonポイント: 12 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 463円〜
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・司馬 遼太郎 (しば りょうたろう)
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カスタマー平均評価: 4.5
司馬先生の期待にこたえるために 他の方々が書いているように、短い文章ながら力強いメッセージがこめられていて老若男女問わず読み手に強い感動を誘う内容。流石、司馬遼太郎ということか。学生に限らず、人生の節目にある人に対する贈り物にも最適だろう。
21世紀になっても世界は司馬遼太郎の懸念を十分に解決できていない。私は本書の執筆当時の対象年齢層だった。そういう意味でも司馬遼太郎の思いを託されたと思い、折に触れて読み返していきたい。 内容は素晴らしいが・・・ 内容は文句無く素晴らしい。老若男女問わず読むべき文章であると思う。ただ・・・印刷がどうも・・・。表紙を見ても伺えるが、蛍光色のようなどぎつい色で、ページを開くたびに不自然な色の自然の写真が目にぶつかってくる。心洗われるような美しい写真とともにこの文章が読めたらどんなにか永久保存にしたい本になっただろうと思うと、実に残念でならない。そのため人に贈る本としては対訳版のほうを選んでいる。 卒業祝い&入学祝に贈りたい 絵本のような大きな文字と、すべての漢字に『ふり仮名』がふってある50ページにみたない薄い本。
しかし、内容はかなり濃厚。
少ない文字数と簡単な言葉で、核心を突いた深いことをスバッと言ってのける。
“「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」はもともと一つの根から出ていて、
その根は本能ではないから、私たちは訓練をしてそれを身につけなければならない”
人間だから忘れることも、気を抜くことも、余裕がないこともある。
でも本来人間は、自分がどんな状態にあったとしても、その気持ちをけして忘れてはいけない。
・・・忘れない努力をしなくてはいてない。
なのに我々は『昔、習得したから』といって、訓練することを やめてしまっているのではないだろうか。
やさしい人間とはなにか。いたわりの心を持つ人間とはなにか。
もう一度原点にもどって考え直してみたい。
1989年以降、この内容を国語の時間に読んだ子供がうらやましい♪
教科書として出会わなかった自分のために、まず一冊。
さらに、大人買いして
(親戚の子供も含めた)周りの人間すべてに配り歩きたくなる一冊です。
感動しました 私は中ニです。
この本は本屋でみつけて、買ってみましたが
読んでみてすごく感動しました。
この本を私の担任の先生に奨めてみたところ、また感動したらしく
道徳の授業でこの本を紹介し、朗読しました。
でも感動だけではなく、大いに考えさせられました。
私達が今いる二十一世紀は司馬さんが見たかった二十一世紀なのかと。
すばらしい世の中なのか?と。
だからこそ、若い担い手である私達が今の現状を見据え、
これからの未来を変えていかなくてはならないのだと深く思いました。
もっとたくさんの人に読んでもらいたいです。 大人も子どもも、一度は2?3回遅読すべき! 著者は歴史小説で有名な司馬遼太郎で、小学校高学年(5?6年)を対象にした2つのメッセージを1冊の本にまとめたものである。小学生を対象にしているせいか、平易な文体でわかりやすくスラスラと頭の中に入るように書いている。
第一のメッセージでは、20世紀で生涯を終えた著者が21世紀を生きる我々に原点回帰と責任の重大さを伝えている。一方、第二のメッセージでは緒方洪庵(こうあん)を取り上げ、適塾の思想を通じて生きるべき指針を提示している。
本書で、司馬遼太郎は平易でシンプルなメッセージを伝えている。そのため、一度読んだだけではあまりにも簡単に頭の中に入ってしまうため、あまり印象に残らないことが多い。
特に、社会人になると学生時代のように時間があるわけではなく、限られた時間を有効活用しなければならない。そのため、一度に複数冊の本を同時並行で読み進めてしまい、同じ本を二度読むことは滅多に無い。
しかし、本書のような類の本は読めば読むほど奥深さが出るものである。実際、書評を書きながら2?3回読んでいるのだが、平易な文体からは考えられないほど底知れぬ教えが隠されており、時間に追われがちで不安定になりがちな心理状態が落ち着いてくる。
個人的には、後者が参考になった。吉田松陰の松下村塾と似たような方針であり、福沢諭吉や大村益次郎を輩出した適塾は、身分平等で入学試験も無く、「学問をする」というひとつの目的で集まっていた。
加えて、塾生の間で勉強を教え合い、8つの級に分け、級の代表である会頭(かいとう)と熟生全体の代表としての塾頭(じゅくとう)を設置していた。さらに、12か条の訓戒を書き、医者としての心構えを説いていた。
この訓戒を知った時、会津藩の“什(じゅう)の掟”を思い出した。「ならぬことはなりませぬ」で有名な什の掟だが、教育問題で揺れる現在の日本で最も必要な要素ではないだろうか?
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[ 文庫 ]
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世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 2003-03
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 100円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
幕末史を長州藩(まずは松陰吉田寅次郎)の視点より観る 大河ドラマ『篤姫』を大いに楽しんだ一ファンであるが、幕末史を描く視点がどうしても薩摩藩中心であったため、同時代の長州藩の動きはどうであったのか、またその思想的淵源であったと思しい吉田松陰の生涯とはどのようなものであったのか等々を知りたく思い、全4冊の一読を開始。第一巻は、彼の誕生からプチャーチン率いるロシア艦隊に乗船してロシアへの密航を企てるも失敗に終わるまでを描く。
彼の終生の純粋さやストイシズムのオリジンが叔父玉木文之進の超スパルタ教育にあったことや密航の背景をなすその地理好き(プラス過書手形事件による家禄没収及び「育」(はぐぐみ)身分への転落)、女犯禁欲の意図(自ら狂夫(非常の人)たらんと欲した彼は、「おのれの欲望を解放解放することによって固有の気が衰え、ついに惰になり、物事を常識で考える人間になってしまう」(149?150頁)ことを怖れ、性欲を抑えることによりそれを達成しようとした)がよく理解でき、大変面白く読み終えた。
この他、司馬氏の達意の筆により描き出される周辺人物たちの生き様(森田節斎、佐久間象山など)も興味深い。 功山寺に行ってきました。 出張で広島に行った折り、念願の功山寺に行ってきました。
幕府と対決しようとする高杉が、必死に静止しようとする部下の頭上を飛び越えて馬で駆け下りたという、「功山寺の坂」を見たかったからです。
自分の選択が本当に正しいものと確信できるとき、他者の曖昧な意見の集約など必要ではないものなのでしょう。
そして自分の選択を即座に行動に移せるのは、稀有なことであるでしょう。
高杉晋作という存在が、今の世の中でも圧倒的に我々に迫ってくるのは、迷いのない行動にその本質があるのでしょう。
時代を作った若者の生き様をいきいきと描く 説明はいらないでしょう。
あまりにも有名な、松陰と晋作の物語です。
当時、学ぶことは書物と人からであり、自分の思想を他人に伝播し、思いを同じにしていくことが、学派でした。
その思いは人から人に伝わり、松陰の思いは形を変えて昇華し、長州の国を変えて行きます。
このふたりのヒーローの生き様はすさまじく、常人には理解したがくそして畏怖を
感じるものですが、この作品では作者は市井の商人や、時代に流され筋を通せない
日和見、幕府によって右往左往していく今は記憶に残っていない長州の人々も合わ
せて書いています。
他の方のレビューにも詳しく熱く語られている二人以外にも、井上聞多や、山形有
恒など次代の明治を迷走も含めながらも作り上げていった人々も登場していきま
す。
彼らの性格や判断と松陰や晋作のものは、かなり異なっており、革命前期は松陰の
狂や晋作の動が必要であり、革命の後期においては、井上や山県の慎重さが必要で
あったのだろうと、時代が選んでいった人材の妙にも納得感心させられます。
幕末という日本史においても特異な時代、駆け抜けていった彼らの生き方は我々を
魅了してやみません。
長州藩の七年 司馬遼太郎が独自の解釈で吉田松蔭と高杉晋作の人物像を分析した小説。幕末の事象も長州藩の動きもこの二人の周りの事のみが詳しく記される。薩長同盟や禁門の変や池田屋事件はほとんど語られません。同じ長州でも桂小五郎や吉田稔麿や入江九一や大村益次郎や広沢真臣についてはほとんど記述がありません。久坂も高杉との対比で使われるぐらい。詳しく無い人には全体的な幕末史の勉強用としては少し不向きかもしれない。ただ松蔭と高杉の二人に関する人物分析は巧みですが、現代人の眼から見た想像上の解釈という感じがするのは否めない。二人の辞世の句を見ても、何かしっくりきません。他人がとってつけた感じがする。やっぱりその時代に生きた人でないと分からないのでしょうね。少しでも思想に近づくには孟子を十年くらい勉強した上で講孟余話を読むぐらいはしないと無理かもしれない。それはさておき、「竜馬がゆく」などでは存在が希薄だった伊藤や山形や井上、品川、山田、佐世八十郎(前原一誠)、野村靖(兄は入江九一)などの若き日の姿も描かれているし、晋作が大阪に潜伏中に徒然草を買い求めようとして幕吏に捕まりかけたエピソードとか西宮の港を守っていた籐堂藩の番侍が臆病だったという「老の思ひ出」からのエピソードも面白い。松蔭の幼年期の師匠でもあり叔父の玉木文之進はこの本を読む限り、物凄く出来た人です。玉木は維新後、前原一誠を旗頭とした萩の乱(この乱で玉木の養子の真人(乃木希典の弟)も戦死)に責任を感じて切腹します。まあこの様にエピソードも豊富ですので長州藩の事が好きな人は読んでおくべき本かも。 修羅場をかいくぐった腹の据わり方 幕末の混乱が上手く整理され、(僕のように漠然とした印象しかない人には)吉田松陰と高杉晋作の果たした役割に新しい発見があるようで面白いです。
面白い点は、革命の実行を三代に分けている視点、諸藩、特に薩摩と長州の違い、尊王攘夷思想の変遷の三点です。明治維新を松蔭の思想的根拠を築いた世代、それを乱世で実現していった世代(高杉、西郷、大久保、木戸など)、その乱世を片付け新しい権力社会をつくった世代(伊藤、山県など)で整理する視点にはなるほど、と思わせるものがあります。恐らく、第二世代の高杉は体質的に第三世代では活躍ではなかったのではないかと思われます(西郷がそうであったように)。また、長州があくまで思想団体として描かれるのに対し、薩摩が政略のみで動いた、とする洞察にも共感を覚えます。また、少なくとも晋作にとっては尊皇攘夷はあくまで倒幕のための戦略であった、という認識には(僕は)斬新さを感じました。
しかし、それにしても幕末には凄い人たちがいたものです。維新には印象の薄い、井上聞多や山県、伊藤にしてもそれなりの命を賭したリスクをおかしていることが分かります。特に井上の覚悟とここ一番の行動力はこれは凄い。明治の元老たちにはやはり、こういう修羅場をかいくぐってきた腹の据わり方があったのでしょう。
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[ 文庫 ]
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人間というもの PHP文庫
・司馬 遼太郎
【PHP研究所】
発売日: 2004-04-01
参考価格: 520 円(税込)
販売価格: 520 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
先の見えない時代だからこそ、自分の志を見つめて、行動すること ■読み始めたきっかけ
司馬遼太郎の著作は愛読しており、氏の人間に対する洞察、日本人とは
どういう歴史と民族性を持っているのかに興味があり、読み始めました。
オムニバス形式、ベスト盤のようにジャンルごとに引用がありますが、
個人的には少し読みにくかったです。時間のない方向けの、司馬遼太郎の
エッセンスが抜き出されているとの趣旨だと思いますが、個人的には時間
を掛けてでも小説を読んで、そこから司馬遼太郎の人間観、日本人感を感
じ取る方がより深く理解できるような気がします。
■心に残る言葉
p.136 太平洋戦争のベルは、肉体をもたない煙のような「上司」もしくは
その「会議」というものが押したのである。
→今の日本企業も同じような状況にあると思います。決裁事項は、「本社」
の指示を仰いだり、会議で決めます。その中に「個人の顔」はありません。
「会社」として決めたのであり、「個人」で決めたわけではありません。
その決定事項が失敗したとしても、「会社」や「会議」が決めたことであ
り、個人に責任はありません。ただし、終業後の居酒屋で「あのプロジェク
トは俺がやった」、「あれは、自分は反対だった」と会社の外で個人の主張
が出てきます。
p.144 朱子学が江戸期の武士に教えたことは端的に言えば人生の大事は志で
あると言うこと以外になかったかも知れない。志とは、経世の志のことであ
る。世のためにのみ自分の生命を用い、たとえ肉体が砕かれても悔いがない
というもので、、、
→私も志というものは大好きな言葉です。最近は、リナックスなど無償で協
力し合う、ボランティアが起きていると聞きます。参加している人は、「楽
しいから」、「かっこいいから」という自分の美的感覚によって、行動して
いると聞きます。自分が世の中のためになると思ったことがあれば、何か手
伝うことができないかと思うことが志の根幹だと思いました。
p.228 陽気になる秘訣は、あすはきっと良くなる、と思い込んで暮らすこと
です。
→最近は未来が予想しにくい不確定な時代になっているような気がします。
ちょうど、時代の転換点にあるような感じがします。その世の中にあって、
自分を生かす術を身につけ、世の中の役に立つことを考える必要があると思
います。自分が何ができるのか、それが社会にとってどんな影響があるのか?
仕事も家庭についてもそんなことを考える毎日です。
ただ、悲観をしてばかりではいけないと思います。逆にいえば、変化はチ
ャンスがあると思います。江戸時代の300年間は変化しないことが大切でし
た。これからの10年は大きな変化のある時だと、上海に暮らしていると強く
実感をします。
■どんな人にお勧めか
人間とは、日本人とは、について考える人
歴史上の英雄の行動から、何かを掴みたい人
長い小説は読む気がしない人 珠玉の言葉集 『竜馬が行く』『坂の上の雲』などの膨大な作品群によって、人間とは何か、日本とは、日本人とは何かと問い続けた国民的作家司馬遼太郎。
本書は、「人間を考える」というテーマで、同氏の作品群の中から、選び抜かれた珠玉の言葉を収めた一冊。
司馬作品に精通された方は、読んだ作品を思い出す、または、知らない作品を見つける目的で。そうでない方は、本書でお気に入りの一冊を見つけて、ぜひとも原書にチャレンジされてはいかがでしょうか。 摩訶不思議な、またはあまりにも単純な →摩訶不思議な、またはあまりにも単純な「人間というもの」
司馬遼太郎は膨大な著書の中でそれをさまざまに表現していました
この本は、その表現を..珠玉の文章を..抜き出し、
現代の日本人に提示したものです
→司馬は、小説という舞台の上で、歴史上の人物に成り代わり
あるときは、口に出した言葉として
またあるときは、頭の中の考えとして
それを表現します
その潔さ、華麗さに魅せられずにはいられません..
→司馬作品を
読んでいない人には、「噂どおりの面白い本らしいので、読んでみよう」と、
そして今まで読んでいた人には、「もう一度この観点で、読み返してみよう」と
思わせる本だと思います
..私は恥ずかしながら前者ですが..
→カテゴライズされていて、非常にわかりやすい構成になっています
たくさんの著書の中から
これらを抜き出し、並べなおした人も、相当に
「人間というもの」を知っている方ですねー 「功名が辻」他司馬作品の中から名文抜粋 人間とは何か、司馬文学の脊梁となっているものは、「人間知」である。例えば、2006年大河ドラマ「功名が辻」における山内一豊とその妻千代は、男と女のあり方を教えられる。
千代は、利口さを、「無邪気」で擬装していた。利口者が、利口を顔に出すほどいや味なものはないということを、この娘は、小娘のころから知っている。だから、たれからも愛された。
男には、女に対して二つ型がある。それは「猟師型と農夫型」であると、同作品で次のように比較している。
猟師型は女色家といっていい。たえず,未知なものにあこがれ、獲物を一つ獲ては,〈さらに他に大きなものが〉と思い、あこがれ、冒険心をかきたて、ふたたび山に分け入ってゆき、つぎつぎとあくことを知らない。女好きというのは、決して道徳感覚が欠如しているということではない。普通以上に、未知へのあこがれがつよく、冒険的行動欲がさかんだというだけのことである。
農夫型はそうではない。十年一日のごとくわが畑をたがやし、くわ先にあたるその土のきめ、においになじみきり、その定着的生活になんのうたがいも示さぬばかりか、もし土地を変えて他村へ移れといわれれば目の色をかえていやがる。
その他テーマは「組織から社会へ」「夢と生きがい」「日本と日本人」等、作中の名場面名セリフが抜粋されていて楽しい(雅) 最高の1冊 幼少の頃から司馬遼太郎先生の著書を愛読してきたのですが、最近は遠のいておりました。大河ドラマで「功名が辻」をするというので、無性に読みたくなり、真っ先に手に取ったのがこの一冊。日本人にはたまらない、名文がこれでもかっ!と詰め込まれています。この一冊は、私が初めて部下を持ち、一つの組織をまとめ収益を上げるといった状況に直面した時に常に手にしていた一冊。Machiavelliの君主論が結論まで明らかにしているのに対して、司馬作品は、歴史を題材としているのに、あくまで現在進行形。全てが生きている。私たち次第といった感じでしょうか。だから、頭にも心にも入りやすい。「時勢は利によって動くもの。議論によっては動かぬ。」そりゃ、そうだ。で、あなたはどう動く?と言った具合に。
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